静かなブラジル。フットボールのないブラジル。
サンバもボサノバもないブラジル。無為なブラジル。
その日常は、希望も絶望も断たれた日本の若者のそれと、驚くほど似ている。
これこそが、世界から捨てられた人々の実像なのだ。

星野 智幸(作家/「俺俺」「ファンタジスタ」ほか)

<試写を観ていただいた皆様の感想>

亀には、ベスト助演賞をあげたい。
主人公の三人がとてもいいのは、三人が三人とも、全体を通していっこうに「成長したり」「乗り越えたり」しないところ(笑)。せっぱつまっても全然叫んだり怒鳴ったりしないし、「この現実から抜け出してやるぜ!」的なハングリーさも別になく、やることといったらせいぜい小金をかすめとるぐらい。この独特の「おとなしさ」は、私自身や身の回りの同世代の人たちにも共通している。でもそれが逆に、
「生きてるだけじゃ、駄目なの?」というシンプルであたたかいメッセージを観る側に投げかけてくる。

<30代・女性>

これまでに観たことがないモノクロのブラジル。これは、まさにサンパウロの色だ。

<30代・男性>

30代のころの自分を思い出した。
女の子に向かって「夢を持て」としたり顔で言い、サティの音楽に浸る男(パイロット?)に笑った。
「いる、いる、こういうオトナ」と思ったが、今や、自分が、その世代になっていることに気づいた。
美しいモノクロ映像の中に、ユーモアや皮肉やメタファたっぷり。久々に映画らしい映画を観た気がした。

<50代・女性>

モノクロの静かな画面から、3人の耐えることのない日常の空しさ、疎外感、絶望がひしひしと伝わって来た。一見、怠けているような3人だけど、お互いのことを心配し、祖母を気遣う一面が見えて、
優しいまなざしを持った映画だと思った。

<10代・男性>

出口が見えない、何をしたらいいのかつかめない。手探りで行きている彼らの「今」に自分自身もいっしょに引きづり込まれたような息苦しさが新鮮だった。
銀がぬめぬめと光ったり、よどんだりするCORESが印象的。

<40代・女性>

飛べない若者たち3人。飛行場が近いのに…。
なんでもない日常、部屋でダンスしたり、音楽したり、好きなモノに囲まれ、好きな仲間たちといる。かけがえのない時間こそが、人生で大事だと思った。
雨の中の3人、星座に見えたフライパン…に、お祖母ちゃんの寄り添った目玉焼き、いい。

<30代・男性>

音楽が良かった。ロックもクラシックもアコースティックもあって、それぞれの心情を表しているかのように流れてた。ルカのお祖母ちゃんが、とても好き。もう一度、観ると、違う発見があるかも、と楽しみ。

<20代・女性>

時代や社会や自分の年齢に取り残されて行く焦り、諦め、いらだちがこんなに表せるものなのか。
大げさではなく、淡々としたよそよそしさ、その現実感がとても心地良かった。
自分と同世代の監督が撮っているのもうなずけた。
「聖者の午後」というタイトルは、映画の浮遊感にも似た、言い当てない感じが、いい。

<30代・女性>

日本もそうだけど、この3人には、本当に行き場がないのか?
「もっと、がんばれよ」と、ちょっと背中をどやしつけたくなるのは、私が歳をとったからかも。
でも、3人がとにかくグダグダ、無事でいてくれることに、ほっとしてしまった私は、
まんまとワナにかかった感じ。

<40代・女性>