STORY
演出家のマヌエルが次に考えている舞台は、ミュージカルを作るためのミュージカル。構想からキャスティング、完成までを描くには、振付師が不可欠だった。彼は元妻であり女優で著名な振付師のサラに助けを求める。ただ、マヌエルが書く脚本の中で、サラは交通事故にあい車椅子になった振付師だ。引き受けたサラが主導するキャスティングでは、何とかオーディションに受かろうとする若者たちの緊張感と競争心、そこから頭角を表す男女3人が生き生きと描かれる。その中の一人、イネスは父親と地元ギャングとの対立を心配しながら稽古に励む。メキシコの過去と現在を繋ぐために、独自の舞台を作ろうとする演出陣。数々の力強い伝統音楽がダンスとコラボレーションする中で、悲劇と虚構と現実が交錯する物語が生まれる。
INTRODUCTION
メキシコ第二の都市、グアダラハラで撮影が始まった2019年、サウラは87歳、ストラーロは79歳。アナ・デ・ラ・レゲラ(NETFLIXドラマ『ビバ!メヒコ』)とマヌエル・ガルシア=ルルフォ(NETFLIXドラマ『リンカーン弁護士』)を主演に、メキシコ国立バレエ団ソリストのグレタ・エリソンドをイネス役に抜擢。20代の瑞々しいダンサーたちの熱い舞台を撮りきった。メキシコでも舞台の演出をしていたことから、編集が半年延期になり完成したのが2021年。撮影の9割を行ったグアダラハラの劇場の照明を気に入ったヴィットリオ・ストラーロが、それを最大限に活用し、サウラ監督も超小型マイクでライブ音を録音するなど、二人とも革新的な技術を使って新たな可能性に挑戦した作品。現実と虚構、舞台と映画が交差しながら、一つの物語を作っていく。 映画の最初と最後に出る絵コンテは、撮る前ではなく、編集中の週末や映画が完成してから描いたもので、舞台であれ映画であれ、冒険するリスクを犯して即興の醍醐味を味わいたいから絵コンテは描かない、と2021年11月のEl Español誌のインタビューで語っている。メキシコ音楽は50年代、60年代とスペインで大ヒットし、ホルヘ・ネグレーテやトリオ・ロス・パンチョスなど大勢のミュージシャンが、スペインでコンサートを行なっていたので、監督には身近な音楽だった。メキシコに行くたびにサンプリングし、伝統音楽の宝庫であるメキシコでなら現代と融合するミュージカルが撮れる、と確信して始まった、この企画が最後の劇映画となった。
監督・脚本:カルロス・サウラ/撮影:ヴィットリオ・ストラーロ/音楽:アルフォンソ・G・アギラール、カルロス・リベラ/美術:アレックス・アルベス/ 振付:エドガー・レイエス/編集:ヴァネッサ・マリンベル/製作:エウセビオ・パチャ
2021年 | スペイン=メキシコ | DCP | 99分 | カラー
CAST
アナ・デ・ラ・レゲラ
Ana de la Reguera
サラ役
1977年4⽉8⽇、メキシコ・ベラクルス生まれ。 メキシコ太平洋岸のベラクルスで育ち地元の⽂化学院で学んだ後、メキシコシティのテレビ局が主催する芸術センターで学ぶ。舞台版 「El Cartero」(イル・ポスティーノ)で, メキシコ舞台ジャーナリスト協会と舞台批評家協会の主演⼥優賞を受賞し、1996年にメキシコのTVシリーズ「Azul」でドラマデビュー。その後、テレビ、映画、CMなどで活躍。2006年の『ナチョ・リブレ 覆⾯の神様』でハリウッドデビュー。その後はメキシコとアメリカを中心に活動。その他の出演作品はカウボーイ&エイリアン』(2011)、TVドラマ「弁護⼠ビリー・ マクブライド」(2016)、『エブリシング』(2017)、『フォーエバー・パージ』(2021)など。最新作はNETFLIX映画『ビバ・メヒコ!』(2023)。
マヌエル・ガルシア=ルルフォ
Manuel Garcia-Rulfo
マヌエル役
1981年2⽉25⽇、メキシコ・グアダラハラ生まれ。 ニューヨークフィルムアカデミーで学び、メキシコで俳優の世界へ。『ウルティマ、ぼくに大地の教えを』(2013)でアメリカ映画デビュー。『荒野の七人』のリメイクの大作『マグニフィセント・ セブン』(2016)では、七人のひとり、バスケスを演じた。2017年にケネス・ブラナー監督・主演の『オリエント急⾏殺⼈事件』に出演。その後、『死霊船 メアリー号の呪い』(2019)、マイケル・ベイ監督のNetflix映画『6アンダーグラウンド』(2019)、トム・ハンク ス主演『オットーという男』などの話題作にも出演し活躍してきた。2022年から始まったNETFLIXのドラマシリーズ「リンカーン弁護⼠」では主演を務め、現在シーズン2が⽇本でも配信中。
グレタ・エリソンド
Greta Elizondo
イネス役
1993年1月25日、メキシコ・モンテレイ生まれ。 米国ワシントンD.C.のキーロフ・バレエ・アカデミー卒業。現在、メキシコ国立バレエ団ソリストとして活躍。Instagramではファッションアイコンとして183,000人のフォロワーから支持されている。また、時計メーカーのロンジンのアンバサダーにも任命された。本作で映画デビュー。
イサーク・アラトーレ
Izaak Alatorre
フアン役
1993年8月1日、メキシコ・グアダラハラ生まれ。 ヒップホップ、ストリートダンサー、俳優、振付師。15歳からプロのダンサーとして活動を始め、同時に演技を学び、グアダラハラでは主に舞台に出演。2014年にメキシコシティに移って以降は、ダンスに専念。本作の撮影のために地元に戻ったが、コンテンポラリーダンサーではなかったので、他のキャストが到着する二週間前から集中的に練習した。17歳からダンスのクラスを開き、今ではグアダラハラでパフォーミングアートスクールGLOWを開校。TikTokのフォロワーは14万人。映画出演は「Páramo」、「No Manches Frida2」に次いで3本目。
イサーク・エルナンデス
Isaac Hernandez
ディエゴ役
1990年4月30日、メキシコ・グアダラハラ生まれ。 バレエ一家に生まれ、米国フィラデルフィアのRock School of Dance Educationで本格的にバレエを学ぶ。アメリカン・バレエ・シアター(ABT)を経て、2008年にサンフランシスコバレエ入団、2010年にソリストになる。2013年オランダ国立バレエのプリンシパル、2015年にはイングリッシュ・ナショナル・バレエのプリンシパルを務めながら、各国のバレエカンパニーにゲスト出演。2018年、メキシコ人として初めて、バレエ界のアカデミー賞と言われるロシアのブノア賞を受賞。本作が映画デビューとなり、その後、NETFLIXのドラマシリーズ「我らのための死」に出演。
マノロ・カルドナ
Manolo Cardona
アンドレス・アンセルモ役
1977年4月25日、コロンビアポ・パヤン生まれ。 14歳からCM、モデルとして活躍。1993年にドラマ「Padre e hijos」(父と息子たち)で俳優デビュー。2005年『ネイキッド・アサシン』で映画デビュー。『美しすぎる兄嫁』(2005)、『ビバリーヒルズ・チワワ』(2008)に出演。2008年には兄弟二人と制作会社を設立。第1作『イグジット』(2011)は、麻薬密売カルテルの内情を描き、コロンビア映画史上、最も野心的な作品だと評価された。シャロン・ストーン主演の『ボーダーラン』(2012)、『ブロークン・アイデンティティ』(2012)、NETFLIXの大ヒットドラマ「ナルコス」(2015=2016)で2シーズンに出演、NETFLIXドラマに初主演した「そしてサラは殺された」(2021-2022)はシーズン3まで製作された。映画では『エンドレス・ウォー』(2018)で、ベレン・ルエダ(『永遠のこどもたち』)と共同主演。
ダミアン・アルカサル
Damian Alcazar
アンドレスの父親役
1958年1月8日、メキシコ・ミチョアカン生まれ。 国立芸術学院、舞台実験センターを経てベラクルス大学演劇科で学んだのち、2つのカンパニーで8年間、舞台俳優として活動。 その後、カルロス・カレラ監督『アマロ神父の罪』(2002)に出演、セバスチャン・コルデロ監督『タブロイド』(2004)で、メキシコのアカデミー賞であるアリエル賞、スペインのバヤドリード映画祭で最優秀男優賞を受賞。メキシコの前政権批判でも有名で、ルイス・エストラーダ監督と組んで、2010年には「El Infierno」(メキシコ 地獄の抗争)を、NETFLIX映画『完全なる独裁』(2014)、そして『ビバ・メヒコ!』(2023)など政治的ブラックコメディをヒットさせている。