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第一回リビエラ・マヤ映画祭(3)

リビエラ・マヤ映画祭RivieraLabのWork in Progress作品と
受賞はしなかったけれど、気になった作品たち。
Work in Progressは、全部で8本。これって1本が90分から
120分なもんで、1日に2、3本観ることになる。
音楽が入っていないもの、まだ編集中なもの、色彩や音の
調整ができていないもの…。つまり、未完成作品の数々なのである。
さすがに疲れたけれど、観てよかったと思うのは、想像力が
かきたてられたところ。シノプシスだけでは良く分からないけれど、
何しろ観る。これは映画館だからできた、と思う。
DVDやテレビだったら、集中力もたなかっただろう。
実験的なものやドキュメンタリー、何でもありの部門だった。
その中で、目出たく200,000メキシコペソを受賞したのは、
「Tanta Agua」
監督:アナ・ゲバラ・ポセ
アルゼンチン/ウルグアイ/オランダ
DCPへのポストプロダクション費用を獲得したのが
「Fogo」
監督:ユレネ・オライソーラ
カナダ/メキシコ
そして、カテゴリーになかった特別審査員賞に
「Materia de Composicion」
監督:ペドロ・アスパン
ブラジル
「Tanta Agua」のアナ・ゲバラはこれが初長編作品。
監督自らがラフ編集したところまでだったけれど、一番、
出来上がっていた。ウルグアイで撮影された家族の物語。
父とティーンエージャーの娘と小学生の息子が、バケーションに
出かけるのだが、毎日、ず~~~~っと暗く冷たい雨ばかり。
何とかバケーションらしいふりをしようとする父親を尻目に
地元の男の子と仲良くなっちゃう娘、勝手に遊びに出かける息子。
それでも互いに何となく気遣い合う家族。きっちりと編集して
リズムができたら面白くなると思った作品。
本編と違ってピーカンな撮影現場

「Fogo」は、カナダ沖のニューファウンドランド島で撮影。
ほぼ全員が出て行った島に、最後まで残る年配の男3人を
描いた作品。主役は地元住民だがドキュメンタリーではなく
フィクション。
前作はドキュメンタリー。
「Intimidades de Shakespear y Victor Hugo」
シェークスピアとビクトル・ユーゴ通りの角にある家で下宿
していた、とてもハンサムで知的で絵がうまい男性が実は、
連続殺人犯だった!という驚愕の事実を家主の女性や近所の
人々の証言で綴った作品。こちらはまるでフィクションのようなドキュメンタリー。

そして、最後に審査員特別賞を受賞したのがブラジルの監督。
いやはや、驚きました。何と言う詩的な映画だろうか、と。
ブラジルの音楽家3人が、それぞれ、あるひとつの映像と対話しながら音楽を作曲し、グループやオーケストラで演奏・録音し、映像に合わせるまでを追ったドキュメンタリー。
その映像というのが、またすごくて、家が解体していく姿なのだ。
どこにも素材があがっていないので紹介できないのが残念。
そのほか、気になった作品と監督たち。
「Calle Lopez」
監督:リサ・ティリンガー/ヘラルド・バロッソ
メキシコ
メキシコシティのセントロ・イストリコに
あるCalle Lopez(ロペスストリート)に住む人々を
描いたモノクロ・ドキュメンタリー。
ちょっとフアン・ルルフォの「En el hoyo」を思い出させる、
という人もいたけど、穴の中(地下鉄工事)よりもストリートのほうが
格段に混沌と猥雑さが入り交じっていた。
あとはアルゼンチンのリサンドロ・アロンソがプロデューサとなって
ウルグアイのマヌエル・ニエトと組んだ「El Lugar de Hijo」
いやはや、編集途中なので、ちと苦しかったけれど、どこまで行くんや~~と
叫びたくなった。まるで3本分の映画を1本にしようとしているかのような…。
リサンドロ・アロンソは1975年生まれ。監督からアートディレクションまで
全部自分でやっちゃいました初長編作品「La Libertad」がロッテルダムで
受賞したことから注目され、その後の作品「Los Muertos」「Fantasma」
「Liverpool」は、カンヌ、トロント、ロッテルダムの常連になった。
パタゴニアで撮影した「Liverpool」

マヌエル・ニエトは、やはり初長編作品「La Perrera」でロッテルダム映画祭
タイガーアワードを受賞。

この2人が組んで、どんな映画になるか。
今はまだ迷走中なのかもしれないけど完成したら、ぜひ観たい。
最終回にしようと思ったけど、次回は番外編。
ここに来なければ存在を知らなかっただろう、
チリの短編2本。
今回の参加作品ではないけれど、観た中で一番驚きました。