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ブラジルの岡村淳さんと「あもーる あもれいら」

26日(木)、11:00から下高井戸シネマで、記録映像作家、
岡村淳さんの「あもーる あもれいら」
第三部にして完結編を観た。
岡村さんはブラジルに移住し、ひとりでドキュメンタリーを
撮っている。取材も撮影も編集も、ナレーションまで岡村さんだ。
だから私にとっては、監督、というより作家という言葉が
しっくりくる。
岡村さんを紹介してくれたのは、作家の星野智幸さん。
「もう、ほんっとに面白い人だから」
と言われて会ってみたら、いや、チョー面白ろくて
ずっと話を聞いていたかった。
岡村さん自身については、こちらの
日記を読んでいただくとして、

ブラジルに渡ったドキュメンタリー屋さん
岡村淳のオフレコ日記

「あもーる あもれいら」のこと。
この作品は、ブラジル南部のパラナ州にある
小さな町、アモレイラにある保育園の1年を
撮った作品で、3部作になっている。
貧しい家の子どもたちを預かる保育園には、
日本の長崎純心聖母会から派遣されたシスターたちも
保育士として活動している。
今回は、第3部完結編!だが、
独立したドキュメンタリーとして、とても
楽しかった。笑ったり、涙したり、ハラハラ
しながら、こんなにも自然体で観た
ドキュメンタリーは、これまでなかった。
悲しいできごともあるし、貧しい
環境の中で、子どもたちを通して様々な問題が
見えて来る。
だが、子どもたちはもちろん、カメラを構え、
質問している岡村さんを含め、取り繕っている人が
ひとりもいない。
笑いながら、涙しながら、全身で
「生きていこうとする」子どもたち、
余りのやかましさに時にはキレる先生、
ため息をつくシスター。
そこに質問を投げかける岡村さん。
「聖母マリアの観点からすると
どうですかね?」(という感じの質問)
「ふっ」と笑ってしまったのだが、
自分が現場にいたら、
「いや、ここでそんな質問を」と
ドキドキしていただろう。
そしてシスターが答えるまでの
長い間(ま)を、固唾をのんで見守る
緊張感。
まさに、「今、そこ」にいるような
気持ちで、全編を観た。
もっともっと観たいと思った。
保育園に来なくなったルアンはどうしたのだろう、
イカロは小学校に入ってどうなったのだろう、
名前は忘れたけど、あの泣き叫んでいた
女の子は、今、どうしているだろう。
長崎純心聖母会のシスターたちや、そこで
シスターとなった地元の人々、
岡村さんから様々な質問を突きつけられていた
堂園シスターは…。
まるで自分が会った人々のように身近に
思い出されて来る。
音楽を使った格好よいドキュメンタリーは
数々あれど、いつも被写体との間に距離を感じていた。
それはもしかすると、撮っている人との距離かも
しれない。
今回、私は、まるで無防備で「そこ」にいた。
撮る人、撮られる人、それを観る人、皆に
きれいごとを許さない作品だと思った。
子どもたちが寄ってくると「助けて~」という
岡村さんの声とともに、カメラがあちこち向く。
乳児を養子に出された女性から
余りにつらい話を聞き、涙するシスターを映しながら、
その内容については、触れない。
岡村さんの映像作家としての矜持と
ひとりで作る、という気概が生み出した
愛(あもーる)がある、すばらしい作品だった。
以前、シネマ・ジャック&ベティで観た
南回帰線」も続きが楽しみで仕方がない。
植物学者の橋本伍郎先生と岡村さんの対話も
ずっと観ていたい。
このあと「あもーる あもれいら」は、
4月30日に関西5月4日にメイシネマ祭で上映される。
岡村さんが日本に帰国したときにしか
観られないので、まだの方は、ぜひ!!
「『きぬごし豆腐』よりも傷つきやすい」
岡村さんのトークも、めちゃ面白いです。