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ブエノスアイレスで「ルイーサ」監督、脚本家たちと

あらら~、もう大晦日だわ~と気づいた今日。
ブエノスアイレスから戻って、1文字も書いていなかった。
気がかりなことがあると落ち着かなくて、つい、
後回しにしてしまうのですが、ツイッターで、皆様から
いただいた「ルイーサ」の監督、脚本家へのご質問の答えを
今年中に、何とか書いておかねばと思った訳です。
ずっとメールのやり取りはしていたけれど、会ったのは初めて。
それでも「ルイーサ」を媒介に丸で昔から知っている仲間のような
気分になりやした。いやあ、話がはずんで長くなったのだけど、
そして、帰りは脚本家のロシオと地下鉄に乗って、撮影現場を
たどってホテルまで戻りました。映画で見るほど広くない
地下鉄。アングル工夫したんだなあ、と初めて分かった!
大掃除も年賀状もあきらめ(って、諦め早いんですけど)
年越し蕎麦とお雑煮とブログを優先することに!
ラテン!ラテン!ラテン!-ブエノスアイレス1
ブエノスアイレスのパレルモでお肉のランチ!
向かって右奥から「ルイーサ」の監督ゴンサロ、右手前が
脚本家のロシオ、左奥がプロデューサのアレ(いや、
“あれ”じゃなくてAleですからして)
それでは、GO!
Q:「ルイーサ」は、愛猫は亡くすし、失業するしで、
ドン底に陥るのに、日本のように、自殺が選択肢に入らないのは、
国民性なのでしょうか?

監督(ゴンサロ)
「いや、ブエノスアイレスでも自殺する人々はいるし、
ラテンアメリカの中では、かなり多いほうだと思う。
でも、ひとつ言えることは、僕たちは、常に
混沌の中で生きている、ということ。国として安定したことは
今までに一度もなかったし、日本に比べて国民が若いから、
不安定だとも言える。アルゼンチン人は慣れているんだ。
政治や経済や労働形態の急激な変化や失業に。
でも、僕たちはとても表現力豊かで、苦しいことや悲しいことを、
内に秘めずに、全部、外に出す。それで、前に進めるんだと
思うよ」
脚本家(ロシオ)
「ルイーサの結末を書いたときの秘密を明かすわ。
最後のシーンを書いていたのは、ある夜だった。
その日は、私にとって、特別良い日じゃなかった。
2時間ぐらい最後のシーンを書き続けた。ルイーサは
できることは、すべてやって、猫も埋葬して、その後、
命を絶つ、という最後だったの。そこまで、書いて
私は眠った。翌日、朝の光とともに目覚めたとき、気づいたわ。
ルイーサは決して自殺しない、と。作者の私が、どう
感じようが、ここまでともに物語をすすめてきたルイーサを
知れば、彼女の中に自殺という選択肢はない、と確信したの。
私は、コンピュータをつけて、最後の部分を書き直した。
するとすべての物語がしっくりとおさまった。
彼女は、どんな状況であれ、どんな形であれ、
生き抜く女性、前に進んで行く女性だったのよ」
Q:あなたにとってブエノスアイレスとは?

監督(ゴンサロ)
「ブエノスアイレスは、他の大都市と同じく人を眩惑するし、
怖がらせもする、境界のない街だ。
でも、個人的には、それは人が作りだしているものだと思う。
カオスや空虚に対する極端な恐怖感、すべてをコントロールしたいという
馬鹿げた欲望は人間が持っているものだ。そうして、高齢者たちが、
まるで摩耗した歯車のように、迷うような大都会を
作っている。僕は、でも、人を信じている。思いも寄らない場所で、
人の優しさが開花することを信じている。(アルゼンチンの作家)
エルネスト・サバトが書いたように『惨めさを歌う人間に、
世界ができることは何もない』」つまり、すべては人次第で、街は
変わると思う」
脚本家(ロシオ)
「ブエノスアイレスは世界でも有数の美しくて魅惑的な街だと思う。
優雅でダイナミック、でも、同時に無謀で残虐な面もあるし
情け容赦ないことが多々ある街。どの街角にもルイーサがいる。
大都市は、孤独と孤立と個人主義を作り出すけれど、一人一人がほんの
少しの優しさを持てば、ブエノスアイレスも世界の大都市も、
救われるとおもう。大都市に住む私たちの毎日の行動が、街に
希望を与えることができるし、そうなれば、もっと美しい街になるわ」
Q:ルイーサの人物造形のために特定のモデルはいましたか?
脚本家(ロシオ)
「ルイーサという女性は、私の想像の産物なの。
この物語を書こうと思ったとき、大都市の孤独、という言葉が
浮かんで、まっさきに想像したのが、猫と住んでいる
60歳ぐらいの女性。上の世界(ブエノスアイレスの街なか)が、
まるで悪夢のように感じる彼女にとって、下の世界(地下鉄)が
救いになるんじゃないか、と思った。
それも独自の視点で世界を見ている女性だったら、と考えたら、
ルイーサがどんどん生き生きしてきたの。
この脚本を書き始めてから、今まで、街なかで、
ルイーサたちを見ない日はないほど、たくさんの
ルイーサがブエノスアイレスにいるから、その影響かも。
きっと東京にもいると思う。映画を見たら、ぜひ、東京でも
ルイーサたちを探してみてほしい」
いやあ、長くなっちまった。
とても真摯に答えてくれたので、こんなに長いのですが、
「あなたにとって、ブエノスアイレスとは?」という
質問から、こんなに長い答えが来るとは思わなかったっす。
ということで、来年が来る前に書きたかった2人の答え。
やっと書けた!!!!
ということで、来年は、もう少し、マメに書こうかな。
でも、無理はいけないから、やっぱりマイペースでいきまっせ。
それでは、皆様、良いお年を!!
最後に、「ルイーサ」の音楽を担当したスーペルチャランゴの
アネル・パスの音楽を。とても優しい曲です。
この曲が入ったCDを来年、弊社から売り出す予定だす~~。
「ルイーサ」のサントラ版と同じ時期に。
いつになることやら…。皆、休暇中なもんで。