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オリバー・ストーンのラテンアメリカ

現地時間の25日(金)、ニューヨークのAngelika Film Center
(アンジェリカ・フィルムセンター)で
オリバー・ストーン監督のドキュメンタリー、
「South of the border」(Al sur de la frontera:国境の南へ)が
公開された。
予告編

覚えてらっしゃるでしょうか、みなさま。
昨年のベネチア映画祭で、チャベス大統領と共に
レッドカーペットを歩いた、オリバー・ストーン監督を。
$ラテン!ラテン!ラテン!-チャベス
公開と同時に、待ってました!とばかりに叩く「ニューヨーク・タイムズ
重箱の隅つつきの様相なきにしもあらずだけれど、
オリバー・ストーンも諸手を上げてのチャベス賞賛は、いかがなものか。
なんか浮き足だっている感が拭えない。
長い間権力の座につくと腐敗するのは必須だが、チャベス大統領は
まだまだ支持率が高いが、反対デモも起こっている。
カストロより演説が分かりやすい、と言われるけれど、
訳の分からん行動に出ることもシバシバ。
「北朝鮮と団結する」と言ってみたり、大統領批判を行った
最古の民放テレビ局RCTVの放送免許更新を拒否して、
結果的に、つぶしてしまった(2007年)
こともある。AFP
そのあたりのことに関して、オリバー・ストーン監督に
ツッコミが足りないのは「コマンダンテ」の時に
カストロに政治犯やエリアン君事件に関するツッコミが
足りなかったのと変わっていない。
でも、まあ、これまで米国のマスコミもチャベスを悪魔のように
言って来たし、ボリビアのエボ・モラレス大統領にいたっては、
「コカ野郎」って感じの蔑み方だったので、極端にいかなければ
揺り戻しがきかないのだろう。
それにオリバー・ストーンは米国のために撮っているのであって
(「米国よ、目を覚ませ!」ってな感じで)
ラテンアメリカのために撮っているのでは、ないから。
米国政府や偏向マスコミをギャフンと言わせるために
カストロやラテンアメリカを出しているような気がする。
分かりやすいエンターテインメントとしてのドキュメンタリー。
BGMも明るいぜい!
ラテンアメリカの首脳陣の声を一気に伝えるには
とても有効な作品だと思う。
この映画は、今年5月下旬から、ベネズエラ、エクアドル、
ブラジル、パラグアイ、ボリビア、アルゼンチンと、
それぞれ出演している各国の大統領出席のもとでプレミア上映されてきた。
そして、ようやくニューヨークで上映開始。
これだけ話題になるのは、オリバー・ストーンだから。
同じ時期にウルグアイのゴンサロ・アリホン監督が
3年間を費やして製作したドキュメンタリー
「Ojos Bien Abiertos」のほうは、内容は濃いのに
上映されたのはウルグアイの映画祭と
メキシコのドキュメンタリー映画祭アンブランテ。
予告編

オリバー・ストーンより以前に、まさにラテンアメリカ各国をめぐって
撮影したドキュメンタリーだったけれど、ラテンアメリカの外では、
悲しいかな、それほどニュースにもならず。
アマゾンの先住民問題やボリビアの炭坑労働者の問題を取り上げ、
タイトルどおり「目を良く開いて」観察したラテンアメリカの現状だった。
だから、それぞれの国の首脳たちが喜んでプレミア上映に協力するような
形にはならなかったのだと思う。
「South of the Border」も配給が
ついているのは、今のところブラジルだけ。
この手のドキュメンタリーは、きっと後になって
価値が出てくるのだろう。
なぜなら、変動渦中の今、誰もこの先、どうなっていくのか
分からないから…。ただ、その時、検証のために
本当に必要なのは、「Ojos Bien Abiertos」のほうだと
私は思う。いつかお金ができたら上映したい1本。