default img

「マネーモンスター」ジョディ・フォスター監督が語る映画とハリウッド

昨日、ツイッターに流れて来たスペインのニュースで、
「ジョディ・フォスター:『資本主義はあるべき道を逸脱して、
もう人々を助けない』」というタイトルに興味をおぼえ、
インタビューの全文を読んだ。

ABC.es hoycinema
Jodie Foster: <El Capitalismo se ha desivado, ya no ayuda la gente>

別にジョディ・フォスターのファンでもないのに、ここまで読んでしまったのは、
映画のテーマと冒頭のインタビュータイトルから。

いやはや、俄然、観たくなって来たぞ、この映画。

ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツ、ジャック・オコンネルと
豪華な顔ぶれで、テレビの財テク番組「マネーモンスター」の情報で
全財産を失った男が、司会者を人質に番組をジャック、誤情報を
流したことに気づいた司会者と共に、ウォール街の闇を暴く、という物語。

詳細は公式サイトを見ていただくとして、ジョディのインタビューの
要約を書いておこう。

「マネーモンスター」公式サイト

映画のテーマについて
「この映画は、金融危機のことだけではなくて、玉ねぎのように
幾重にも層をなしている。テクノロジーのこと、情報よりも娯楽を
提供する似非ジャーナリズムに金融システム。それら全てが合わさって
ひとつの危険な形をつくり、結局、一般の人々が苦しむ結果になる」

じゃあ、そのシステムを批判する映画なのか、というと…

「私は政治家ではなく、ひとりの映画人だから、何が起こっているか、
を見て、それを物語の背景としておき、観客が結論を引き出せるようにする」

資本主義について
「この映画は、特にテクノロジーの悪用を描いていて、自分自身は、
まだ、資本主義を信じているが、明らかに逸脱している。
資本主義は、人々を助けるために作られた。小さな商売や子供が
大学に行けるように融資するシステムだった。でも、今では、もう
人々を助けない。億万長者が下品なほど富を蓄積するために、
資本主義は、道を踏み外したから」

ジャーナリズムについて
「映画は、常に、芸術と現実の混合で、自分たちの生活を
反映する可能性を追求することが、映画人の責任だと言われて来た。
今のジャーナリズムは、目標を失って、クルーニーの
キャラクター同様、すでに視聴者(視聴率)にしか興味がない。
映画は問いを投げかけるけれど、答えは、映画を観た人、それぞれが出すものだ」

ハリウッドで女性監督が少ない件について
「映画業界が女性に対する陰謀はないと思う。ただ、撮影所が
リスクを怖がっているだけ。これまでに男性と女性監督の数が
同じになったことがないのは、誰もが知っていること。女性監督の
数に関しては、全く変わっていない。独立系の映画では、女性監督が
増え始めているけれど、商業映画は変わらない。

それに、言われたくはないだろうけれど、ハリウッドが作りたい
テーマの映画を監督したいと思う女性は、ほとんど、いない。
私も、その一人で、やるなら自分の物語を語りたい」

カンヌ映画祭で#HollywoodSoMaleという
ハッシュタグ(ハリウッドは男だらけ)について聞かれた
インタビューでも、明確に答えている。

How Jodie Foster is Taking on #HollywoodSoMale at Cannes

「ハリウッドが、ここまでリスクを嫌うようなことは
これまでなかった。スタジオの幹部が怖がっていることに
つきる。もっとオープンでありたい、変わりたい、もっと
良くなりたいと思っていない訳じゃないけれど、伝統から
抜け出られない。だから自分たちと同じような人を雇うのに
忙しすぎて、何を失っているのか(見逃しているのか)分かっていない」

さすが、子役時代からハリウッドにいるジョディ・フォスター、
言うことがはっきりしている!

リスクを怖がっているのは、ハリウッドだけではなく、
成功体験がある男たちだと思う。日本でも視聴率の高いテレビドラマ
から映画を作るのは、成功体験があるからではないだろうか。
(日本の場合は当初からテレビが入る制作委員会システムも
影響しているだろうが…)

そういう点で、女性監督だけではなく、ヨーロッパやラテンアメリカ、
独立系邦画は、挑戦していると思う。

男社会の映画業界、みな、見て見ぬふりをしているが、
ネットフリックスやアマゾンの出現で、心中穏やかでないのは確か。
だから守りに入っているのだろうが、ハリウッドのように
ファイナル・カット権を監督に与えないプロデューサー優位の
伝統的手法は、徐々に崩れていくだろう。

その時、映画の救世主になり得るのは、男女を問わず、
果敢に挑戦する監督たちだと思うのだ。

ヨーロッパと組まないと中々、出品できない
カンヌ映画祭への興味は年々薄れているのだが、
今回、ある視点部門で日本の深田監督が「淵に立つ」
審査員賞を受賞したことで、質の高い独立系邦画に対する
期待が高まり、日本の若手監督が、海外にどんどん
出て行くようになれば、と思わずにいられない。